たのしい計画。



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この前帰りの電車で
たまたま目に付いた『長嶋有漫画化計画』の
レビューを読んでいたら
読みたくて読みたくてもう
居ても立ってもいられなくなって
本屋さんに寄って探し回ってしまった

検索機で探すと在庫わずか
居場所をプリントアウトしてもらって
探したけれど見付けられず
店員のおじさんに聞きに行った

この本屋は冬頃月刊の新潮を探しに行って
店頭に見当たらないので店員さんに聞いたところ
新潮の月刊?
週刊のことではないのか
新潮45ではないのか
小説新潮ではないのか
と矢継ぎ早に言われ、何だかこちらが
責められているような気分になり
自分もミーハー心から(新潮1月号で
古井由吉さんと又吉直樹さんの対談があった)
初めて新潮を購入しようとしていることもあり
検索結果を示すiPhoneの窓を見せて
この通り月刊です‥‥と控えめに説明した
すると最初に聞いた女店員が3名に増殖し
よくわからんが小さく騒ぎになった
そのカウンターにある
色々調べられるこんぴゅーたーで
検索かけたら月刊が存在し
このお店にあるのかないのか
すぐにわかるだろうと思っていたら
どうも売り上げのない本は
本屋への入荷が自動的に切れることがあり
先月は入荷したようだが
今月は入っているのかいないのか
把握出来ていないという説明を
女店員3人に囲まれて受けたのだった

その内の1人が我関せずの態でいて
一言も発さず、それなのに至近距離で
こちらを凝視するという振る舞いをしていたので
癪に障ってはたきたいような気持ちになったが
たまにこういうひとはいるので
説明を聞き終わり凝視ガールの顔をちらと見やって
頭を下げて退店した

そんな経験がふと思い出されたので
今回は本屋歴の長そうな
社員っぽい風体のおじさんに
後ろからそっと声をかけることにする
おじさんはプリントされた紙を見て
コンパスのような足さばきでスタスタ歩くと
さっきわたしが探していた棚の前にたどり着き
素早い動きで店頭に出ている分を確認した
さらに棚の下の引き出しを開けて
奥の方までガサゴソと探し出した
こりゃ多分なさそうやな~‥‥と思って
前のめりに引き出しを覗いたタイミングで
おじさんは「これですね」と
思っていたよりぶっとい本を手渡してくれた

特に愛想がいいというわけではないが
おじさんは
これぞ本屋さんという感じだった

『長嶋有漫画化計画』は1,680円もする
小ぶりの辞書か、という厚みがある
ちょっと迷ったけれど読みたさが勝って
『苦役列車』と一緒に購入した
こちらは解説に石原都知事の名前があった

『長嶋有漫画化計画』は読みごたえがあり
大変面白かった
レビューの通り、ただのコミカライズでない
漫画にするにあたり、小説は
作者の手を離れ・・・・ず
それどころか原作者自ら漫画家に依頼して
編集して、どっぷり自分で作っている本であった
自分でも「実験」ということばを使っておられるが
こんなに面白くて真摯な実験が出来るとは
長嶋さんも光文社さんも
16人の漫画家さんもとてもすてきな創り手だと
感心する次第です
すべては愛情と面白がる心だろう
そしてこの本について書いてあった
エキサイトレビューも面白かった
読みたさをかき立てられるものであった

さて、古井由吉や大江健三郎が好きという
作家の好みが似通っているのに
うちにいるのは又吉でなくセイウチだ

10年ぐらい前、古井さんの『仮往生伝試文』という
その当時絶版になっていた本があり
どうしても読みたいセイウチは
ネットオークションで1万円で見付けて
「この本買うんだ」と言ってきた
その頃はまだ結婚もしていないし、
「へ〜よっぽど欲しいんだなぁ
 でも1万円もよく出すな」
と思うぐらいだったが、今では一度は止めると思う

その後、その本は2004年に復刊した
3,500円ほどだったと思う

「自分が読んできたどの小説や詩よりも
 古井由吉の書くことばは美しいと思う」
とセイウチが昔
静かにはっきり言っていた

あーこのひと
ほんとに古井さんが好きなんだなと思う
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by electric-prophet | 2012-05-08 11:26 | 日々好日 | Comments(0)

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