指のおはなし。


小学生の頃からだから、何年になるかな
16、7年経つかな

わたしの手の指はしつこい皮膚病にかかって
皮がめくれて、水泡が出来て、
何もしていないのに切れては血が出て、汁が出て、
爪は醜く変形し、痛いし痒いし
治ってきたかと思ったらまた別の指がなって
いつも何本かは見てすぐにおかしいとわかる様相を呈していた

それらはほんとうに酷くて
お風呂に入る為に
指ごとにいちいち絆創膏を2枚も3枚もでぐるぐる巻きにし
(出血しているので痛いし、皮がめくれてしまうので)
そのせいで醜い爪には絆創膏の粘着質が残っては黒く汚れて
ますます見せたくない指先を、わたしはいつも意識して隠していた

色んな病院に行って、でもいっこうに治らずだった

そんなことになったのはたまたまなのだろう
いつも原因はわからなかったし
いちばん辛いのはその指で暮らすわたしなのだが
母に指が治っていないことに触れられると
萎縮して、自分が悪いように感じ、
出来るだけ病気の指に話の矛先を向けられないようにしていた

絆創膏の消費量は半端ではなく、いつも常備していて
毎日十枚二十枚と使う

いい方法はないかと考えあぐねて
姉やんに両手にビニール袋をかぶせてもらって
手首でテープや輪ゴムで留めてお風呂に入ったりした

お風呂で気が休まることなんて無かった
気の遠くなる話だ


++

思春期に入ろうとする頃だったろうか
卒業式の練習の時かな
隣に座ったクラスメイトのおとこのこが
何の気なしに、自然に
「汚い指」
と言った

そのとき、わたしはどういう反応をしたのか覚えていない
今なら
「そうやねん、なかなか治れへんくってさー」
とか何とか言うのかも知れない

でもそのときは、どうしたのだろう
笑い飛ばしもせず、怒りもせず
呆然としたのか睨んだのか
本当に覚えてない

自分のことは覚えていないのに
「きたないゆび」
と言った彼の自然な表情や声のトーンを鮮明に覚えている


母に、責められるように指のことを言われると
(母は心配してくれていたのだろうが、
 いかんせん彼女は言動があまり適切でなかった)
嫌で嫌で仕方なく
何よりもこんな指で生きていかなければならない先を憂い
泣きながら母に
「もう嫌だ!!こんな指切り落としたい!」
と叫んだこともあった

とにかく四六時中、指の皮膚病に縛られていた
見られたくなかったし、うつるんじゃないかと思われて
触るのをためらわれるのも怖かったし
マニキュアすら塗れないことが辛かった


状態はさして変わらず中学生になり高校生になり
わたしは大学生になった

アルバイトとして飲食店などで働くと
しょっちゅう水を触るのでまた治りづらく
いきなり皮膚が裂けて出血すると、痛みをこらえて服に押し当て
一瞬だけでも血を止めてお皿を運んだ

その頃になるともういい加減
これはもうずっとわたしとともに存在していくんだと
うっすら諦めのように感じていた


それが、二十歳前後で指の状態が少しマシになってきた
いつもどの指の爪も変形し、痛痒く汁が出ては固まっていたのに
だんだんと普通の指になってきた

勿論完治にはほど遠かったが
体が大人になる過程で体質が変わったのか
とにかくマニキュアが塗れるぐらいまでにはなったのである

わたしは喜んだ
他人が指に視線をやっても、さほど気にならなくなった




27歳の今も、わたしの指はまだ皮膚病が完治しないままである
いつもどの指かはおかしい
勝手に皮がめくれてはカサカサになり、出血し、爪が変形する
それでも不思議なもので、あのときのことを思えば
なんてことないか、と思えるのだ


**

姉やんが中学生の頃、ひとつだけ出来た発疹が
手足にまたたく間に広がった

彼女もまた、いわゆる思春期、青春時代を
見て取れる辛さの皮膚病とともに過ごした
それはやはり完治することなく続いている

こういうものは、見てわかるだけに、こころの傷になる

「ねえちゃんのカイカイ(痒いから)、代わってやれたらのう」
と祖母が何度も言った

動物霊の話をどこかから聞いてきて、
原因はそれじゃないかとか
もう、どこに何を見ているんだかわからなかった

真実として、我々は、塗り薬がなければ日々過ごせなかったんだ


いつも羨んでたよ
当たり前に綺麗な指してるひと

綺麗な指というのは
汁も血も出なくて
勝手に切れてこなくて、痛くなくて痒くなくて
爪が変形しない指

ものをためらいなく持てるような指
わたしはそういう指が欲しかった

でも、高城の手と指はよく動いてくれてるよ
いろんなものを触って、運んで、作って、描いて
抱きしめられるもの
Commented at 2005-09-05 17:06
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 53t817 at 2005-09-05 22:39
私も小学生の頃、指や手の甲、顔にひどいしもやけ(ただれ)ができてかなり悩んだことを思い出しました。今はすっかり直りました。年を重ねるに連れ良くなってくるものだと思われます。

武蔵野
Commented by are-f at 2005-09-05 23:43
私もずっと寒くなると、指がただれました
痛くて、痒くて やっぱりそんな自分の指を何とかしたかった

その指も、アトピーも
今ではすっかりです

その分、今では指を大事にします
クリームを塗りこめて
大事にします

有絵
Commented at 2005-09-06 00:26 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by electric-prophet at 2005-09-06 10:35
施錠のあなたat 2005-09-05 17:06さん
痛いとか痒いのはほんとうに辛いけど、多少慣れるんですよね
しかしひとに見られるっていうのがまた苦痛で、これは慣れない
自分が思うほど相手が気にしていなくても

生活する上で色んなところに制約があって
コンプレックスになる
でもやっぱりあなたの手も働き者で、
ご家族はその手が大好きなんでしょう

*青*

Commented by electric-prophet at 2005-09-06 10:42
武蔵野さん
子どもの頃になったものは、大人になるときの体質の変化で
マシになるものが多いと聞きました
慢性化したのか治りきってはいないのですが、
まあこれはずっとこういうものなのだ、と
思えたり思えなかったり
だってやっぱり痛いし痒いし〜

*青*

Commented by electric-prophet at 2005-09-06 10:46
有絵
そう言えば、手にクリーム塗ってくれるのも
自分の手なんやね
大事に丁寧に塗りこんでください
なかなか自分の身体を大事にすることは難しい
毎日使っているのにね

*青*

Commented by electric-prophet at 2005-09-06 10:55
施錠のあなたat 2005-09-06 00:26さん
あなたのように、自分の指が好き、と言った友だちがいます
女らしい指ではないけど、作品を作るときによく動き
苦楽を共にした手が身体の中でいちばん好きなのだそうです
あなたも、彼女も、そう言えることが素晴らしいと思います
それでも、治るに越したことないですから
お大事になさって下さい

読んでくれてありがとうございます

*青*

by electric-prophet | 2005-09-05 08:50 | 日々好日 | Comments(8)

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by electric-prophet
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